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シリーズ 13  「業界研究のツボ」  労務環境編

業界研究(労務環境編)
2018-10-22

業界研究(労務環境編)

学生の「働く動機」 で、よく挙がってくるものの一つに、
「安定した会社に入りたい」
 という項目があります。「働く動機」とは、本音ベースのぶっちゃけベースなので、これも正しい動機なんですが、ここでいう「安定」とは一体、何を指しているのでしょうか?
学生が「安定」を考えるとき、それは多くの場合、以下の2つに絞られます。
①会社が倒産して路頭に迷うことはない、という安定。 ②普通に働いていけば、それなりに給与も上がっていく、という安定。
この①と②、2つの項目を満たす業界という認識で、「金融・保険」を目指す学生が多い。
 よく、日本経済を語るとき、「失われた10年」という言い方をされることがあります。皆さんも耳にしたことがあるかもしれません。この10年というのは、1990年代前半から2000年前半のことだと言われていますが、この時代には、中小企業がたくさん倒産してきました。さらに絶対に倒れる訳がない、と言われていた大企業までも倒産した時代。
 金融業界でも大きい企業が倒産していますが、でも他の業界に比べたら、倒産比率は低いです。もちろん、企業の経営努力や、統合・合併などで生き延びてきたという要素もありますが、国が保護していた、という要素も見逃せない。ここでは、国が介入することの是非がテーマではないので流しますが、とにかくそれだけ、「金融・保険」は不況に強い業界とも言えると思います。
 だからこそ、「金融・保険」では、①が成り立つ訳なんですが、②についても、成り立ちます。この業界、総じて収入レベルは高いです。・・・と書くと、今、金融業界で働く1,2年目の若手からクレームが来そうですが、あくまでも他業界との比較です。若手は給料低いもんね(笑)。
 確かに入社数年までの給与水準は押さえられます。でも20代後半から30才くらいになって、自分に肩書きがつくようになると、徐々に上昇カーブを描くようになります。ただし、比較論で言うならば、地銀は都銀に比べて低い傾向にあるし、証券、保険のようにカテゴリーに区分していくと、会社に寄ってマチマチですが、まあ一般論として捉えてください。このご時世、貧困率とかって言葉も飛び交っていますが、この業界では、年収面で見ると、入社10年目クラスの社員は、そんなに悪い数字ではないはずです。
 そう考えると倒産しないし、数年のちには、給与もそこそこもらえるし、という安定さはある業界です。ただ、ここで「安定」という言葉の意味をもう一度考えてほしいと思います。何が自分にとって、「安定」なのか?ということをです。
 この業界で働いたことのある人であれば判るはずだし、僕も前に書きましたが、この業界はハッキリ言って自分の時間が確保できない業界です。つまり残業続きということだし、ハードワークだということ。加えてノルマもあるし、勉強もしなくてはならない。精神的に追い詰められるケースも想定できます。そうすると、精神的には、常に「不安定」になるという可能性もある。
 それと、銀行に限って言えば、昨日も書きましたが、将来的には出向や転籍の可能性もある。簡単に言うと、出向とは、在籍は今の会社のままで、仕事は違う会社でするということ。転籍は、籍ごと違う会社に移るということです。転籍の場合は、給与体系も異動先の会社に従うことになります。
 あくまで一般論ですが、この業界での出向や転籍は40代から起こり始めます。銀行というのは、基本的に同期の連中との出世争いです。サバイバルレース。銀行がいくら大きいとは言っても、割り振られるポストには限りがあります。そうすると、出世争いのサバイバルレースから脱落した者は、必然的に銀行に入られなくなってしまうという流れです。そして外に出される。
 そうすると、いくらそこまで給与が高かったとは言え、出向や転籍となれば、軒並み下がります。しかもかなり下がる場合が多いんです。僕は過去に、いくつかのベンチャー企業に勤めてきて、銀行からの出向者を見てきたし、社員の給与を管理する仕事もしてきたので、こういった現実をじかに触れて知っています。
 こういう人生を「安定」と呼べるかどうかは、個人の価値判断に寄るので、何とも言えません。若いうちからシッカリとビジョンを持って頑張ってきた人であれば、外に出されても、自分を高く売っていけることもあるしね。要は自分次第。
 今は、不況で氷河期に近い時代ですが、金融業界は、基本毎年、一定数の新卒を採用しています。これは銀行を狙う人にとっては朗報ですが、同時に、入社後には将来ポストを争うことになるライバルが大勢いる、とも言えます。シビアですよ、意外と。
 「金融・保険」の働く環境では、嫌な側面ばかり書いてきました。もちろん福利厚生なんかは充実しているし、休暇制度もシッカリしています。でも、そんなことよりも、毎日の仕事に辟易してしまうことも多いし、将来出向や転籍で、シビアな状況になる可能性も高い。そんな現実も持っている業界です。この業界は人気があるゆえに、シッカリと現実を理解してから、入社してほしいと願うからこその記事です。どうか今一度、自分がなぜ「金融・保険」なのか?を自分の「働く動機」から見直してほしいと思います。
つづく。

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